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大きく揺らぎ始めた船室で一人、麻袋を抱え、中に入ってる硬い物に額を当てて、どこから話そうか?考えていた。
「わっ!」
考えに沈んでいたカイルを現実に引き戻したのは、身体が浮くほどの揺れだ。想像していた以上の物凄い揺れに、錯覚ではなく身体が浮いた。浮いたあと尻を強かぶつけ、また浮く。船酔いレベルじゃない強烈な揺れに、慌てて袋を抱え直した。カイルの体重より重い袋も浮いたからだ。これが船室の側面に当たって穴が空いたら確実に沈む。潮の勢いが凄いのか、アランの操縦が下手なのか。ヒヤヒヤしながら足を踏ん張る時間は、とてつもなく長く感じた。やがて揺れが収まり、胸を撫で下ろすと、ドアが開いた。
「カイルー、大丈夫か?」
「あー……まぁ、なんとか」
ぐったり麻袋に凭れたカイルを笑う。
「顔色白くなってるよ?」
もう外に出ても大丈夫だと、連れ出してくれた。
「海流乗ったからな。もう二時間もしたら着く」
指差す先には、水平線の向こうに緑の大陸の頭が覗いていた。
「もう?!」
あの島からは大陸の一部どころか周りに島影一つなかったのに、たった二時間で着くと言われて驚いた。
「で、あっちが俺らの島」
反対方向を指差されたが、海しかなかった。
「……なにもない」
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