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激しい潮流に揺らされていた時間から考えて、そんなに島から離れていないはず。
「海流はさ、すっげ速いんだ。一気に押し出されんの。潮の流れ読める漁師はみんな使ってる」
大きな海流に乗れば、長い距離を一気に進めるらしい。
「すごい……」
今はその海流からも外れ、緩やかに大陸に向かってる最中だ。
操舵室に戻り、船を操るアランの足元で、飽かず海を眺めていた。
港に着き、停泊させると船室から袋を担いで街中に向かう乗合馬車に乗った。大きな港町は行き交う人種も様々で、荷を解いて遣り取りされている品物も珍しい物ばかりだった。更に街中には珍しい店が立ち並び、栄え活気付く人々の熱気に圧倒された。慣れているのか、特に気に留めるでもなく、人混みを進んで行くアランを見失わないようについて行くのがやっとだ。
「痛っ」
すれ違った人が持っていた荷物が当たり、治りかけていた肩に鈍い痛みが走った。
「ほら」
前を歩いていたアランが手を差し出してきた。何だろう?と思っていると、焦れったそうに手を握り、引っ張って歩き出した。
「ちょっ、手繋がなくても大丈夫だって!」
「大丈夫じゃなかっただろ。いいから黙ってついて来い」
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