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振り解こうとするたび、逆に力強く握られて、暴れて振り解けるほどのスペースもなく、黙って手を引かれていた。大通りから裏道に逸れ、人通りが少なくなったところで手を離してくれた。
どんどん怪しげな道に進んで行くアランの姿を追いながら、不安に駆られる。治安が良い場所じゃないことだけでなく、あのときのようにアランを見失ってしまいそうな……。
引き留めたいのに引き留めさせてくれない、拒絶に近い雰囲気を纏っていた過去のアランの姿が、目の前のアランの後姿に重なる。それは叫び出したいほど苦しくて、胸を掻き毟りたいくらいの不安と恐怖をカイルに運んできた。
ザッと下がった血が、爪先から抜けて地面にしがみつく。
足の怪我は治ったのに。
いくらだって走れるのに、足が竦む。
怖くて哀しくて淋しくて。
「―――――アランッ!」
嫌だと思った瞬間、叫ぶように名前を呼んでいた。
「んあ?」
アランが足を止め、振り返る。振り向いてくれたことに安堵しながらも、震える足と冷えていく身体が意思に反して動かなかった。
「なに?」
喉が震えて言葉にならない。いや、元々、意味などなく呼び止めたのだから、何も言えない。
「早くしねぇと日が暮れるぞ」
胡乱げに顰められる表情に、自らを叱咤し、動け!と念じた。
あのときとは違う。
今は動けるし、肩は痛いけど足は怪我してない。アランの視線もこちらに向いている。
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