短編

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私は家に帰った。女はいなかった、机にはただあの女に渡した、合鍵だけが置いてあった。 もう夜の12時を回っていた。 私は父の遺品、それも私が送った幼い手紙の束を持ってベットへと向かった。 ベットライトだけで私は私が書いた手紙を読んでいた、ベットライトは私の頭の方に位置して、私の手とそれが持つ手紙の影が、私の足の方の壁に映されていた。 手紙を読んでいると、興味深いのが出てきた。 お父さん、かげあそびを教えてくれてありがとう。 僕は新しい技を覚えたのでお父さんにも見せてたいので一緒に遊ぼうね。 と書いてあった。 手紙をベット近くの机に置いて、記憶の残り香を辿って私はかげあそびを始めた。 途中ネットに頼っていたが、私は私なりのかげを作って遊んでいた。 父と一緒に夜更かして遊び、母に怒られたことを思い出した。 瞼が重くなってきて、かげあそびも雑になってきた頃だろう、私は手の指を組んだ。何かに拝むようなあの形だ。 その時だった、壁に鮫が現れた。あの日焼けした紙に書いてあった、鮫とはこれのことだったのだ。 鮫が今の私の壁でも元気に泳いでいる。 私も大人なので女がいなくなっただけでは寂しくない。しかし父と会えないことが寂しいのだ。 私は一晩中サメを作って遊んだ。 遊び疲れて、私はせっかくの休日を潰して寝ていた。起きるともう昼過ぎだったが私は何故か気持ちよかった。 私は父に鮫を見せたのだろうか、みせられなかったのだろうか、どちらかはわからない。 しかし、最後に見た父は胸の上にサメの形を作っていた。私は父に見せられなかったと思うと寂しいので見せられたと思いたい。
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