短編

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僕の部屋の壁にはサメがいます、お父さんお母さんに言っても笑われるだけですがサメは壁を泳いでいます。 僕が一人夜寂しくなると、サメが出てきます。僕はサメと遊んでいると疲れて寝てしまいます。朝起きるとサメはいなくなっていて少し寂しくなりますが、また会えるので怖くないです。 サメは壁を自由に泳ぎます、自由に泳ぎますけど僕を置いて遠くにはいかないです。 サメは絶対に僕を置いては行きません、夜も朝も僕が寂しくなるとサメは出てきてます、しかし恥ずかしがり屋なので公園にいると出てきません。 お父さん僕にはサメがいるのでお仕事頑張ってください。 父が死んだ。 父の遺品処理の為に倉庫を母と一緒に漁っていると、日焼けした紙に幼い字で書いてあった。 子供がよくやるイマジナリーフレンドという奴だ、サメと私は遊んでいたのだろう、そして父に心配させないよう作文を書いたのだろう。 日焼けした紙には、設計者の父の指紋が黒々と付いていた。父はパソコンを使わずに設計をするタイプだったので、よく指に鉛筆の粉が付いていた。 父がこれを頼りに仕事を頑張っていたと思うと目頭が熱くなった。 今思うと私に高3の頃に「早く寝ろ電気の無駄だ」なんて言っていたのは、私の体を案じてのことだったのかもしれない。
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