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【 苛立ち 】
目を閉じても残像が消えない。
痛いほど見つめてくる目、伝えたい何かを必死に伝えようとする表情、それでいてピリピリ尖った雰囲気。
覚えていないアランとの思い出を語った。
覚えている記憶を語ると、知ってると言った。
突き放しても勝手に喋って、勝手に謝って満足してた。
やたら神経に障る態度の数々に、苛立つのが抑えきれなかった。
懐かしそうにアランを見るのも、突き放しても縋ってきたのも、カイルが初めてではない。寄港した街で偶然逢った人に同じ街に住んでたんだと声を掛けられたことがあった。覚えていないのを水臭いと責められたのに、ここまで苛ついたりしなかった。面倒臭くて適当に話を合わせ、相槌を打つのを楽しんでたくらいだ。
なのに、カイル相手だとムカつく。カイルの中で膨らんだ想いを受け止められない。想いを膨らませてしまった原因も聞いたが、胃がムカムカした程度で、欠片も思い出せなかった。
「なんなんだよ……ッ」
思考に黒い靄がかかり、胸の内までも広がっていきそうな、暗闇の中に身体までもが引き込まれてしまいそうな―――。
腕で目を覆った。
知らない過去ではなく、今のアランとの関係を築けばいい。
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