三、雷、雨、不器用に降り積もる。

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 もう誰にも怒りはないし、今更誰かを恨んでいるわけはない。  でも和解もしないまま転校していった私に、良い思いをしている人はいないに違いない。 「一矢くんは誰にでも好かれてそうでいいよね」 「俺が?」 メールを打っていたらしい手を止め、顔を上げた。 その驚く様子にこちらの方が面食らう。 「おかしいなあ。好かれたい相手には全く好かれないのに」 「それは可哀想ね」 「キスは試してくれたんだけど、脈はあると思う?」 クスクス笑いながら探る。探る目は、優しいのにこちらの気持ちを見透かそうと真っすぐで、射抜かれてしまうそうだった。 「本人も分かっていないんじゃないかな」  ずるい答え方をした。逃げてばかりの私の曖昧な返事を、微笑んで許してしまう。  ずるいのは私か彼か。  朝、起きて酔いが醒め真っ青になった美里に聞いてみようと思う。  
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