一、過去系両想い

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びしょ濡れの姿で玄関に立っていたのは、この店の10年以上の常連客の古河さんだ。 近くで輸入雑貨のお店を経営している、白鳥さんと同じく年齢不詳の美魔女だ。 「古賀さん、大丈夫ですか? タオルお使いください」 「ありがとう。びしょ濡れで申し訳ないわ。白鳥は?」 「もうすぐ帰ってくると思います」  予約の時間までまだ少しあるので、白鳥さんもまだ帰っていない状況だ。  もし先に来たら、私が今日の予定を聞くよう頼まれていた。 「あー。じゃあ華怜ちゃんでいいわ。左手のパーツが取れちゃったからくっつけてほしいの。本当は新しいのにしようかなって思ったけど、濡れちゃったし後日にするわ」  渡したタオルが、雑巾絞りで絞れそうなほど重たくなったので二枚目を渡す。  その後、私が爪を修正している間、ドライヤーで髪や肩を乾かしてもらった。 「あの待合室に座ってるイケメンはお客さん? 業者?」 「あーっと、迷惑な押し売りです」 「へえ。あんなイケメンでもそんな仕事してるの。パトロンになっちゃおうかな」
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