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コロコロと転がるユニコーンは、苦情の顔を私に向ける。
が、全く無反応の彼をよく観察すると、寝息を立てていることに気づいた。
「信じられない」
考えると言いながら、実は眠っていたことに気づくのは予約のお客が帰った後だった。
「あのう、お店、終わったんで帰っていただけますか?」
もう一度、強い口調で声をかけると、一瞬ガクっと大きく首を揺らして彼が顔を上げた。
「あ――、すまない。最近、眠る時間がなくて」
じゃあ私に構わないで、さっさと帰って寝ればいいのに。
「今、お店に貴方と二人きりなので、一度店を出てくれませんか?」
「なんで?」
眠そうに前髪を掻き上げて、立ちあがろうとした彼に、私は良い慣れた言葉を投げかけた
「怖いからです。――貴方なら分かるんじゃないですか?」
眠そうだった目は、急に大きく見開いた。
そして私をゆっくりと見る。
「私、貴方がこれ以上近づいたら、失神か発狂するかもしれませんよ」
「……失神か。したね、あの時」
立ち上がって少し考えてから、彼は私の目をじっと見て、首を傾げた。
「さっき言ったけど、俺と結婚してほしい」
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