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「……君が男性恐怖症で、未だに同級生と会わないと聞いて、胸が苦しくなって、――君の綺麗な髪が涙のように散らばるあの記憶で胸が押しつぶされそうになった」
ぬいぐるみを見つめていた彼が、再び私を捉えた
「同情なのかわからない。過去の贖罪なのかも俺には判断できない。ただ一目会って、この気持ちを昇華したかった。でも会ったら」
困ったように眉を下げ、苦笑する。
「会ったら、綺麗な君を見て自然と言葉が出ちゃった。ああ、俺、結婚したいなって」
「……帰ってください」
「なんでそんな言葉を言っちゃったかなって考えてたら、眠っちゃった」
――ごめん。
簡単に謝られ、どうしていいのか分からなくなった。
悪びれもせず、自分でも原因も分かっていない気持ちを私に押し付けてきただけだ。
「つまり、外見で判断したんですね」
「まあ一目ぼれって外見だろうね。ヤンキーが子犬を拾ってる場面は、外見って言うかギャップだろうけど」
なぜか彼は自分で言って、ククッと小さく笑った。今、どこに笑う要素があったのか分からない。
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