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白鳥さんが探るように私を横目で見る。
きっとこれは、彼が来たことを気づいたに違いない。
「いえ。……とくには」
もう店には来ないというのだから、大丈夫。
バンカーが何度も雨を払っても、視界がすぐに遮られてしまう夜だった。
まるで今の私の、狭くて小さい思考のよう。
雷が何度もなるので、ヘッドフォンをつけ歌を口ずさみながら、雷の存在を頭の中から追い出した。
彼が何をしようとしているのか、雷から逃げるかの如く彼から逃げていた私には知る由もなし。
ただ――雨の夜が明けると、母が家に尋ねてきた。
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