一、過去系両想い

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『髪、綺麗すぎ。触っていい?』 彼は、そう言いながら既に私の髪を掴んでいた。 初めてプールの授業があった日。 お団子にして帽子の中に仕舞っていた髪を解いて、肩にタオルをかけて授業を受けていた。 その時、後ろの席だった『なんちゃら一矢』くんに、言われたのだ。 授業中で、先生が黒板にチョークを走らせている音が響く中、彼の声はクラス中に聞こえていた。 『あ、やべえ。授業中だった。風のせいでシャンプーの匂いなのかな、いい匂いが飛んでくるんだよなー』 ごめん、ごめんって悪びれもなくそういったっけ。 次の日から、私は君を好きな女子たちから『色目を使った』と攻撃の的になるというのに。 ――なのに。 つまんない意地悪や嫌がらせが吹っ飛ぶぐらいの、極上の笑顔で彼は私の髪に触れていた。 もし髪の一本一本に神経があったら、私は触れられた瞬間にドキドキで死んでしまっていたに違いない。
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