一、過去系両想い

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南城グループの長男? 珈琲を飲みながら、母は淡々と言ってのけた。 「あら、安い豆ね」 「お母さんも知ってるとは思うけど、私、男の人とお付き合いする気は全くないの」 「お付き合いじゃなくて、結婚よ、結婚。親同士が決めた愛のない結婚とでも思えばいいんじゃないの?」 愛のない結婚って。 親が子どもにそんな説明するの、一般的にどうなの。 成人しているとはいえ、私は男の人と添い遂げるのが嫌って分かってるのに。 「それに、彼の方が貴方にご執着みたいだし」 「彼って――」 「南城一矢さん。昨日、わざわざうちの医院に来てくださったのよ。好青年でいい人、おまけに家柄、顔、器量よし。何が不満?」 パンフレットを渡され、次の休みに食事会をするとまで説明された。 「……お母さんは覚えてないだろうけど、南城さんって」 「貴方の髪を切った子らしいわね。当時、私がものすごい剣幕で刑事事件にするって騒いで、南城さんのおじい様と、私の父が交流があったおかげで貴方を転校する形だけで収めたけど」 知っていて、その犯人を私に薦めるって私の親はいったいどうしたの。 何を考えているのか本当に理解できない。 「あのね、貴方のおじいさまの医院が経営が上手くいっていないの」
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