一、過去系両想い

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「嘘。だって順調で二年前に大きく改装してるじゃない」 お爺さんの医院は、主に矯正歯科で都内でもっとも有名で信頼できる医院だって言われてるはず。 「改装して、最新医療機器に全て変更して――って順調だったんだけど、おじいさまが定年退職してから、おじい様目当てだった方々の客足が遠のいたって言っていいかしら。そんなわけで困っていたんだけど、改装した代金をすべて南城さんが立て替えてくださったの」 南城一矢が昨年引き継いだ、南城医療機器総合メーカーは、医院の建物から内装、家具などのインテリアの空間デザイン、そして医療機器や医療器具の紹介や仲介、中古医療器具の買取販売などを扱い、医療コンシェルジュと呼ばれるような大企業らしい。 祖父は医療機器を一掃し、南城さんに中古を買い取ってもらい、建物の内装やデザインもお願いしていた、と。 母や祖父の仕事は、私は全く関係なかったので知らなかった。 母の生活も変わった様子がないから、経営が悪いなんて思いもしなかったし。 「ただし代金を全て立て替えてくださったのは昨日ね。貴方の結婚できるなら、と、彼自身がやってきた」
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