二、どんなにすれ違っても朝食は共に。

40/40
2139人が本棚に入れています
本棚に追加
/209ページ
「だから、俺には試していいって」 手を繋いで同時に空を見上げた。 大きくぽっかりあいた穴みたいな満月を見る。 その時に垣間見た彼の横顔は、綺麗だと目を奪われた。 男の人の横顔を見て、綺麗だと思ってしまったんだ。 今まで本当に男の人が駄目だと思っていた。 吐き気だってあったし倒れたこともあった。 目を見て話すなんて無理。こんな風に手を繋ぐことなんて一生無理。 全力で逃げる原因になったのは、この人だったのか。 綺麗に伸ばした髪の毛のためだったのか。 こんなに簡単に平気になるのなら私の10年間が馬鹿みたいに見えないのだろうか。 嘘に見えてしまわないだろうか。 隣の彼の横顔が綺麗な理由と今まで男性が触れられなかった理由と、満月のように大きく開いた心の穴の理由。 私はきっと自分でもわかっていない。イコールで結び付けられない。 ただ彼を拒絶したり無駄な発言して傷つけたことは馬鹿らしくなった。 同居人、ルームシェアする相手として、普通に接していこうと思う。 どうせ、明日の朝も朝食は共にするのだから。
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!