三、雷、雨、不器用に降り積もる。

1/29
2137人が本棚に入れています
本棚に追加
/209ページ

三、雷、雨、不器用に降り積もる。

「信じられない。今週一週間、ずっと雨だって」 焼いたトーストの上でバターが滑っていく。 彼がお皿をトーストの下に置き、滑り落ちたバターをキャッチした。 「ああ、華怜さん、雷が駄目だっけ」 彼もテレビの天気予報を見ながらクスクス笑っている。 「なんで知ってるの!?」 「中学の時、話したよ。台風が近づいた時」  サラダをお皿に盛りながら「お」とテレビを見て目を見開く。 「木曜に台風接近。けっこう中心まで来る」 「県外に脱出したい」 台風の日、予約が入ってるけど来るのかな。 マンションの下でバス停を睨みつけバスが着た瞬間走って乗れば、店の前まで雷に合う確率は減るけれど、正直を言えば予約がないなら休みを頂きたい。 「県外に脱出なら、沖縄に別荘があるよ」 「沖縄ってもっと台風が多い県じゃなかったですか!?」 無理!っというと、彼は楽しそうにククッと口元に拳をあてて笑っている。 「君を縛って沖縄に連れて行きたくなった」 「最低っ」
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!