秘密の居場所

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 「わかってるよ。はい。これは君の分。」  急かす私を見て意地悪そうな笑みを浮かべ、彼は私の分の食事を袋から取り出し、私に差し出した。私はわき目も振らず、その食事に食らいつく。しばらく夢中になって食べていると、彼の手の感触が、そっと私の頭を撫でた。きっとまたあの愛おしそうな目で私を見つめているのだろう。くすぐったさが胸を撫でるが、敢えて彼のほうを見ず、食べるのに夢中なふりをする。しばらくすると、頭上の手の速度は穏やかになり、いつものように彼はぽつぽつと今日あった出来事を話し始めた。  「今日はさ、まぁた書類のミスで怒鳴られたんだ。何回言ったらわかるんだって。僕も、なんで何回言われても失敗するんだろうって思うよ。」     
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