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かおりは思わず叫びそうになったが、すぐに思いとどまり両手で口を塞ぐ。
どう見ても全裸の少女だ。脅えた様子もない事から自分でその姿になったと思われた。コート姿の男の変質者だったら叫んでいたかもしれないが、ここはスルーした方がいいと判断した。
(なんで裸なんだろう)
(黙って通り抜けましょう)
二人は見ないようにして横をすり抜けようとしたが、無視できない物を視界が捉えてしまった。
その全裸の少女は弓を構えたのだ。
「先輩!」
矢が放たれ、二人の胸に突き刺さり消える。全裸の少女はすぐに駆け出して行ってしまった。
「せん……ぱい?」
「かお……り?」
二人は虚無感に苛まれていた。そして失ったものが何か気付いた時、かおりは叫んだ。
「嫌だ! 嫌だ! こんなの違う! 嫌だぁぁぁ!」
「かおり!」
「私は……好き……だった……ひかり先輩が」
「う……うん」
「今は! ……抜けてしまったの……気持ちが、先輩への気持ちが!」
「私も……かおりの事、好き……だった」
「ちゃんと覚えてるよ! 私、好きだったの! ひかり先輩が大好きだったの!」
口から出るその言葉はすべて、過去形だった。
二人は向かい合い、両手を繋ぎ、見つめあう。涙を流しながら。
「先輩……先輩ぃ……私、私……」
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