愛を運ぶもの

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「私たちと違って人間らしいよー? 人間として生まれた神の子? みたいな?」 「どうせゼウスあたりがまた浮気したんでしょ? どんだけ子供作るのよね」 「いやいやエリスちゃん。人のパパ悪く言うのやめてー。いやその通りなんだけどー」    その時、エリスのコンパクト(ラブコン)がぶぶぶと震えた。マナーモードだ。 「なあに? ママ」 「エリス、とってもとっても緊急事態ですわ」  開いたコンパクトに映る母アフロディーテの柔らかな表情と声が、まるで切迫した様子に思わせない。 「どうしたの?」 「よく聞いてちょうだい、エリス。現界専門家(スペシャリスト)たちの情報によると、とっても巨大な『愛』がそちらに移動しているようなのです」 「巨大な愛? そっちってどっち?」 「どうやらそれはエリスを目指しているようですわ。つまり神の子が……あ、たった今入った情報によりますと……」  コンパクトの画面にチラリと映る、A四サイズ程の用紙を差し出す手。アフロディーテはそれを受け取り、ニュース番組の女性アナウンサーよろしく最新情報を伝える。   「移動中の『愛』の分析結果が出たようです。どうやら神界を救うだけのパワーがそのひとつに籠められているようですわ。とってもとっても、おっきぃ……のですわ」     
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