エリス降臨!

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エリス降臨!

 大理石の巨大な柱に囲まれた荘厳なる空間に、これまた大理石で加工された祭壇は、人間の手による(・・・・・)装飾が施されたアンテペンディウムを前面に飾り、側面も金や銀などの浮彫で飾られた絢爛さだ。  祭壇の前に立つ長い金髪の美女――女神アフロディーテは、その両手を天に向けて広げる。 「私の愛しい娘、エリスよ。姿を見せておくれ。そして私の話を聞いておくれ」    目の前の空間に発光した粒子が霧状に漂いはじめ収束し、眩い黄金光を内側から滲ませてそれが広がると、母親と同じ金髪を揺らめかせた少女が光を割って現れた。    年の頃は十五、六に見え、その容姿は母アフロディーテをそのまま若くしたかのような美少女だ。 「なあに? ママ」  母親に劣らぬその美貌を、眠たげに崩した少女の顔は、寝起きのそれだ。 「エリス……今の神界は崩壊の危機に瀕しているの。このままでは冥界に飲み込まれてしまうわ。とってもとっても困っているの」 「ふーん。そうなの?」  両腕をショートボブの金髪の上に伸ばし、ふああと軽く欠伸をしながらエリスは興味もなさげに聞く。     
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