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 ガタンゴトンと云う音が聞こえてくる。それと共に私の体は一定の感覚で小刻みに揺れる。その間隔は何処か懐かしく、安らぎを与えてくれた。ゆっくりと眼を開けると、其処は列車の中だった。私は列車の対面席の一角に座り、窓枠に寄り添って寝ていた様だった。電車にしては揺れが大きい。さては汽車だな?と、私は祖父の言葉を思い出した。 「ここら辺に走っとるのは電車じゃない。よく見てみ。上に電線が架かっとらんだろう?電線が無い奴はみんな汽車いうて、電車とは違う。電車は電気だから揺れも少ないが、汽車はそうでないからよく揺れるんだ」  祖父は元国鉄の運転士だった。最近会っていない。元気にしているだろうか。体調がすぐれないと云う話は聞いていないので、とっても元気なんだろう。しかし、私がその話を聴いたのはもう十四五年前の事だった。  窓の外は暗闇で、天井の薄いオレンジ色の照明がより一層明るく車内を照らしている。外は何も見えない。窓硝子には外を覗う私の顔が映っているだけだった。 「酷い顔…」     
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