4人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
となりの友活
先に言っておくと、私はオタクだ。
ただし隠れオタク。三十うん歳にもなってオタクだと公言するのははばかられ、つい一般人に擬態してしまったが最後。
オタク友だちという宝物を得られずにいた。
趣味は一人でだって楽しい。けれど共有できる友だちがいればもっと楽しいだろうな、なんて思っていた矢先に事件は起きた。
仕事終わり、電車の座席でぼんやりと揺られていたときのこと。
渋谷駅で乗り込んできた乗客の中に彼はいた。
今どき珍しいモヒカンで、さらに色が緑。服も全身レザーのスタッズ付きに鼻ピアスという、なかなかに攻撃力の高そうな出で立ちだ。
その上ギターを背負っている。ああこの人、ロックバンドのギタリストに違いないという様相だった。
その男は車内をくるっと見回し、空いていた私の席に向かってきた。
切れ長のつり目が放つ眼光は鋭く、ただ隣に座られるというだけでものすごい圧がある。
(うわあ…。隣、来ちゃった。)
ちら、と横目に確認すると、彼は席に着くなりスマートフォンでSNSを開き、ざっとスクロールしながらタイムラインを見始めた。
「…!」
(人のスマホを覗き見するなんて良くない、良くないんだけど)
最初のコメントを投稿しよう!