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野川の土手に爽やかな秋の風がそよいでいる。青空はどこまでも高く、遠くにうろこ雲が見えている。
翼橋の両脇に続く土手の道を、茂の右手をももが握り、左手をさくらが握って歩いていた。
「何かご褒美あげなきゃな」
茂が言った。
「何がいい? 」
「なんでもいいのー? 」
お姉ちゃんのももが言った。
「言ってごらん」
「ももね、スマホー! 」
「えっ? 」
「さくらもスマホー! 」
「………」
『スマホ買ってー! 』
「………」
『スマホ♪、スマホ♪、スマホ♪』
「………だめ」
茂が小声で言った。
「どーしてー」
ももが茂の顔を見た。
「まだ、早い…です」
「なんでも良いって言わなかったぁ? 」
「言ってない…」
「ちぇーっ」
「じゃあ、さくらはたもっちゃんのおじいちゃんのイチゴのショートケーキ! 」
「いいね、いちごがおっきくておいしーんだよ」
「丸いおっきーの2つだよ、おばあちゃんもおじいちゃんもいるからー」
「丸いの2つって、ホールを2つ? 」
『うん! 』
「おっきくなきゃやだー! 」
さくらが屈託の無い笑顔を浮かべた。
「いっぱい食べたいもんね! 」
「わ、わ、わかった」
「じゃあ今すぐ『画廊喫茶赤煉瓦』に行こうっと! 」
「えっ、この格好でか? 」
三人は合気道着に袴姿である。
「いくよー! 」
ももが念を込めると、
シュパッ!
三人の姿は消えた…
止め処なく続く野川の流れは、いつものように穏やかだった。
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