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しばらく私たちは仕事の話や、最近あった出来事を話していたら、料理が全てテーブルに並んだ。
「これ、写メするからまだ食べないで」
言って、私はスマホで写メを撮った。すると彼がまた苦笑して、
「お前はなんでも写真を撮るんだな」
と言って、私が撮り終えた料理から手を付けた。
「だって、思い出に残したいんだもん」
私が口を尖らせていうものだから、彼が生ハムを一枚箸で掴んで私の口元に持ってきた。
「思い出なんて、特別なときだけでいいだろ」
そんなことを言うから私は口の中に生ハムを入れて、咀嚼しきってから、
「だって、私にとったらデートだって特別な思い出だもん」
言うと、彼は「ははは」と、目を伏せて笑った。何よ、私の気も知らないで。どうせ、私とのデートなんて貴方からしたらつまらないものなんでしょう。
私は、機嫌が悪くなって、彼より先に熱々のマルゲリータを頬張った。悔しいけどすごく美味しかった。チーズはとろとろだし、生地も薄くてカリっとしている。私は目の前にある料理をひたすら食べた。
彼はそんな私を見て、ただ笑みを浮かべるだけだった。
それから、料理を食べ終えると、店を出た。彼はいつも奢ってくれる。
私は「ありがとう、ご馳走様」と伝えると、「いいよ」と言ってくれた。
そう、彼は優しいのだ。優しいのに、私の心を安心させてくれない。
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