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徐々に俺に対する反応が変わってきたのは、そんなモーションをかけ始めて1ヶ月後くらいだったかな。
飲み会帰り、駅まで歩く途中。
「ね、昨日彼女と会ったんスよね?」
飲み会で佐野先輩の彼女の話になったのを思い出す。
「会ったけど…」
「ふーん。妬きます、純粋に。」
「お前…っ、」
「蒼、です。ちゃんと名前呼んで?」
「本当好きだよな、名前呼ばれんの。」
俺は自分の名前が大好きだ。
俺の好きになった人が、名前を呼びながら俺を求めることに優越感を覚えるから。
「気に入ってるんで。佐野さんと同じくらいには。」
そして少し、頬に触れる。
本当は今すぐ抱きしめて離したくないくらいだけど。
「…っ、不意打ちやめろ。ちょーし狂う。」
「狂ってください。もっと俺だけに。」
こういう時は、目を見て逸らさない。
「…マジでなんなの。蒼、いつもそんなんで落としてんだろ…っ」
暗くてもわかるほど顔を真っ赤にした佐野先輩の隣で、いつもより近い距離に胸がうるさかった記憶がある。
そして一気に距離が縮まった冬休みの最終日。
あの時のことは、今でも鮮明に覚えている。
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