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11 サークルの集まりの後、二人で物置部屋に今シーズン作ったアルバムをしまいに行った時。 「歴代のアルバムも、たまに見ると面白いよなー。 ほら、この美女!ゲレンデがよく似合うことで有名だったアスカさん。」 「…へぇ?それわざと言ってんスか?」 俺が妬くって今まで散々わからせてきたつもりだし。 「…、そ、かも。 お前のヤキモチ、なんかきもちーよ。」 意外だったようでどこかでわかっていた。 佐野先輩の気持ちが、少しずつ俺に向いていたことを。 「っは。んなこと言ってると、手出しますよ?あの時のキスじゃ済まないかもね?」 こういう時こそもうひと押し。 アルバムを見つめる佐野先輩の後ろに立って 両手を前の壁につき完全に逃げ場を奪う。 「…っ、ちけーよ。」 耳まで真っ赤じゃん。 「じゃ、払えば?」 「…できねーよ。」 肩、震えてるじゃん。 「どうして?」 「…。期待、すんだろ…。」 背中から、鼓動が伝わってくるほど騒がしい。 「ね、こっち向いて?佐野さん。」 本当は無理やりにでも向かせたいくらい胸が高鳴ってたけど。 「む、り…。」 「佐野さん。」 「やっぱ、ダメだろ…こんなこと…」 「こうた…、」 「やめろ…っ、」 初めて、孝太と呼んだ日。 この時は俺のか彼のかわからないドキドキが、音になって耳に届くようだった。
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