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「向けないなら、向かせましょうか。」
なんだかこの空気を大事にしたくて、逃したくなくて、ゆっくり時間をかけたかった。
「いや…、」
「やっぱやだ?離れます、」
動くつもりもないくせに、試すようなことをしたと思う。
「待って…、ちゃんと向くから。」
そう言って心を決めた孝太がこっちを向く。
目が合った瞬間、本当にこの人を独り占めしてしまいたいと強く思ったんだ。
「やば…。想像以上にその目はやばい…っ、」
そう呟いて孝太の目線が下を向く。
「佐野さん、ちゃんと見て?」
まだ面と向かって呼び捨てなんか恥ずかしくて、名前なんて呼べなかった。
「蒼、お前の目…魔法みたいだな…。」
グッと引き寄せられて触れるだけのキスを一度。
キた。今しかないよな?
「さーのさん。もっといいやつしたい。」
「なに言って…っ、」
「わかるでしょ?こないだしたやつ。エロいほうのキス。」
身体だけでもいい、この人が欲しくて欲しくてたまらなかった。
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