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12 「向けないなら、向かせましょうか。」 なんだかこの空気を大事にしたくて、逃したくなくて、ゆっくり時間をかけたかった。 「いや…、」 「やっぱやだ?離れます、」 動くつもりもないくせに、試すようなことをしたと思う。 「待って…、ちゃんと向くから。」 そう言って心を決めた孝太がこっちを向く。 目が合った瞬間、本当にこの人を独り占めしてしまいたいと強く思ったんだ。 「やば…。想像以上にその目はやばい…っ、」 そう呟いて孝太の目線が下を向く。 「佐野さん、ちゃんと見て?」 まだ面と向かって呼び捨てなんか恥ずかしくて、名前なんて呼べなかった。 「蒼、お前の目…魔法みたいだな…。」 グッと引き寄せられて触れるだけのキスを一度。 キた。今しかないよな? 「さーのさん。もっといいやつしたい。」 「なに言って…っ、」 「わかるでしょ?こないだしたやつ。エロいほうのキス。」 身体だけでもいい、この人が欲しくて欲しくてたまらなかった。
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