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16 「佐野さん、好きです。」 ソファーから前のめりになって、彼の頬に触れる。 「こーた、だろ?」 彼のテリトリーにやっと入れた気がした。 「ん。孝太…。」 やばい、結構照れる。 「蒼、キスしたい。そんでお前の全部俺に欲しい。」 首に腕を絡ませながら、目を見つめられる。 「…っ。」 こんなにドキドキする空気は久々かもしれない。 むしろ、雰囲気で勃つなんて初めてで。 「ふぁ…っ、ん、ぁ…っ、」 唇が触れたそばから、躊躇なく舌が混ざり合う。 正座からそのまま膝立ちをした孝太が、俺の顎を持ち上げる。 座っているのに腰が抜けそうなキスで、孝太の服にしがみつくので必死だった。 「んぁ、こ…、た…っ、はっ…。」 ちゅっと音を立てて離れた唇が愛おしくて目で追ってしまう。 「えっろ。俺、男なんて初めてだし確かめたかったんだけどさ? 蒼ならよゆーで勃つわ、てかこれ。」 そう言って俺の手を取って自分の下に触らせる。 「…っ、孝太…、っ」 勃ってる。それを知った瞬間俺のモノがさらに硬さを増したのがわかった。 「んな物欲しそうな顔でみんな…、余裕なくなる…っ、つーかお前可愛すぎ。」 「ん…っ、や…、ま、って…っ、」 また上からキスが降ってくる。 「待つ?」 そして離れて。 「…や、…っ、」 「ん、?どーしたいの、お前。」 あーこういう時の“お前”はズルいっスよ。 「…、もっと…っ、」 こんなの、俺らしくない。 けどーー 本当は、彼のテリトリーにいる彼女が羨ましいと思った時から 俺は孝太に甘やかされて、彼の“男”の部分を想像していたのかもしれない。
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