193人が本棚に入れています
本棚に追加
295
295
それから半年、俺らの暗黙のルールで
“透”の話はしなくなった。
名前を出すことも、話題が出ることもなくなった。
…まるで、最初からいなかったかのように。
思うことはたくさんあった。
あの時の、あの瞬間の、俺に対するものは嘘だったんだろうか。
好きだとか離さないとか
手を伸ばしたのは俺だ、って笑う顔とか
全てが偽りだったんだろうか。
何度考えても答えは出ないけど
問い詰めたいとか追いかけたいとか
そんな気持ちはなかった。
結局全てが自分の独りよがりだったんだと思うと、自然と少し楽になった。
…だから嫌だったんだ。
他人からの“好意”なんて嫌いだ。
受け取らない、受け取りたくない。
自分から好きになってたら
もっともっと気持ちが軽かったのに。
こんなに重い荷物、残していかないでよ…。
だったら
手なんて取らないでよ…
最初のコメントを投稿しよう!