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「蒼、今日はハンバーグ作るよ。」
それからまた更に半年が経って
「肉はーー」
「豚ひき肉だよ?」
あの寒い季節がやってくる。
「付け合わせはーーー」
「ローストしたブロッコリーと甘めの人参のグラッセ。」
あの頃と変わらないのは、翔太だけ。
「あーじゃがいもは?」
「マッシュポテトね、作るからそんな暗い顔しないで?」
暗い顔、か。
あの日、はるに抱かれて透に出会った日から
一年が経った。
「ん。翔太、」
「うん?」
もうずっと心にフィルターがかかったみたいで
誰も信用なんてできない。
「ありがとう、な。」
「…なに、急に…っ!」
だけど、翔太だけはーーー
俺の手を振りほどいたりしない。
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