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「はるを送ってやって。」
要件は、それだけ。
「蒼…。一人で待てる?」
「…。送ったら、お前は仕事戻れ。」
一瞬心配そうな顔をして、すぐに微笑まれる。
「うん、わかったよ。」
ベッドサイドに腰を掛けながら頭を撫でて、俺の頬にある涙の跡を拭う。
数秒そうして、部屋から出て行こうと立つ翔太の腕を俺が引き止める。
「翔太。今日、仕事終わったらすぐ帰ってこい。
その頃には俺…一人が嫌んなってる頃だと思うから。」
手を引いた勢いでもう一度ベッドに腰掛けて、今度は抱きしめられる。
「ん、わかった。すぐ帰ってくるよ。一緒においしいもの食べよ?」
「当たり前。遅くなったら許さないから。」
努力します、と。
そして最後にもう一度頭を撫でて部屋を去って行く。
…本当に、翔太にはお世話になりっぱなしだな。
付き合いは小学生の頃からだけど、大学に入ってからルームシェアを始めて、社会人になった今でも一緒に暮らしている。
いつからだっただろうか…
翔太はたぶん俺のことが好きだと思う。
てゆーか嫌でも気づく。
だけど…、ごめん。俺は自分から好きになった人じゃないとダメなんだ。
だからきっと翔太の気持ちには応えられない。
現状維持、それを選んだのは俺ら二人だろ?
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