地上1階第1章

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私は昨晩いつものように繁華街をふらふらしていると20代と思われる男性に声をかけられた。第一声が 「30分程の簡単なアンケートで千円の謝礼だけどどう?」 という言葉だ。報酬としては相場。と私は思った。 それと同時にこの男は怪しいと感じた。 スーツ。一見してサラリーマン風の身だしなみだが、ミディアムの黒髪の毛先の明るさ、染め残しと思われる茶色の毛。 よくみると貸すかに見える耳たぶにピアスの跡と思われる穴が大量にある。 転職でイメージチェンジしたかと思えばあり得る範囲内だが、そもそも路上リサーチを専門とする会社は若い男性に声かけの仕事を任す例は少ないのだ。 女性、それも中年の女性に仕事を任せる会社が多い。 身なりも名札やゼッケン等の勧誘制服が用意されているケースも多い。 限りなく百パーセント近く偽物だと私は思う。 しかし私はあえてこの仕事を引き受ける事にした。 怖いもの見たさではない。 チャンスだと感じた。 私の事を知っているという事はこの繁華街に度々現れている証拠。 誘拐でをするなら1階住民は選ばない。  私にも利がある条件で口をふさぐ、 おそらく金か社会的地位を得られるチャンスだ。
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