第一章

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「ところが、お前はあの場所にいた。何故だ? 剣も鎧もなしに戦場に出る馬鹿がどこにいる? 挙句の果てにマナ中毒だと? お前の後衛術士はどれだけ間抜けなのだ!」  そんなことを言われても何が何だかわからない。あの戦場にいた理由はカイト本人が一番知りたいことだし、マナ中毒とやらも知らないし、まして後衛術士など聞いたこともない。 「落ち着いてくださいクディカ。そのように責め立てては、彼も委縮してしまいます」  たおやかに座るもう一人の女性が、金髪の女性を嗜める。 「危篤状態から回復したばかりなのです。可哀想ではありませんか」  彼女は柔和な微笑みを浮かべつつも、どこか困ったように眉尻を下げていた。  ゆったりとした臙脂色の法衣に身を包んだ彼女は、長い髪を一房に編んでいた。その髪色は深い翡翠のような緑であり、カイトに驚きをもたらしている。染めているわけではないだろう。緋色の瞳を縁取る長いまつ毛も、少し太めの眉も、頭髪と同じ色彩である。 「しかしだなリーティア。この者が敵の間者ということも十分にあり得る。何も知らない振りで我らを欺こうとしているのかもしれん」 「考えすぎですよ。彼からは、少なくとも害意は感じません」  先程聞かされた彼女達の自己紹介を思い出す。  金髪の女性はクディカ・イキシュ。ホワイトナイツの師団長と名乗った。     
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