女神と彼の罪

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西崎さんはその後、愛華さんの事をぽつりぽつりと語っていた。 その口調はいつものどこかふざけたようなものではなく、少し寂しげでいて甘い調べで…… 過去の話をしているのだろうが、その言葉の端々にまだ愛情が見える。 つまり西崎さんはまだ愛華さんが好きなのだろう。 出会い付き合った事、そして自分はフラれたのだと話したところで言葉は途切れ……いつの間にか寝息に変わっていた。 やはりかなり疲れていたのだろう。 その寝顔は少し穏やかには見えるが、日本に来てすぐに仕事をしているし、もしかしたら音楽以外の仕事は彼の細やかな神経を削るのではないだろうか。 軽く見せているけれど、西崎さんは敏感で繊細な裏側が隠れているのかもしれないと、ここ数日のやり取りで感じ始めていた。 (もう少し細かく気をつけておかないといけないかも) メンタル面もサポート出来るように少しプランを練ろう。そう考えていると車が西崎さんの仮住まいのホテルに着いたので、車寄せで停車し、声を掛ける。 「西崎さん着きましたよ、起きてください」 声に身体が揺れて、西崎さんはゆっくりと褐色の目を開けた。透き通るような瞳がホテルの街灯に照らされて濡れたように艶めき揺れていて……思わずその色の美しさに目を奪われた。 「あぁ寝ちゃってたか、ごめんありがとう……お疲れ様、また明日」 車を降りようとした西崎さんに声を掛ける 「明日また迎えに来ますから、今日はもうゆっくり休んでくださいね」 「んー、そうだね!スコアさらって寝るよ」 そんなことしたら眠れないじゃないのとそこは強く休んで欲しいと念を押す。 「それは今夜はいいから寝てください」 「はぁい、言う事聞いて寝ますお母さん」 「お母さんじゃありません」 「フハハ、心配してくれてありがとオヤスミ菜々華ちゃん」 西崎さんはそう言うとバチンと左目でウィンクをしてから、手をひらひらと可愛らしく振りながら車を軽い足取りで降りて行く。 その姿がキザではあるが似合いすぎて思わず吹き出しそうになってしまった。 (どこぞのアイドルか!) ホントに派手なヒトだと思いながら走り出す。確認でバックミラーを見ると、先ほどまで軽い足取りだった西崎さんが扉の近くで項垂れるようにして歩いているのが見えた。 やはり疲れているのだろう。やっぱり明日から少し気を付けよう。そう思いながら自宅に急いだ。
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