女神と彼の罪

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女神と彼の罪

大学3年の時だったのだそうだ。 ピアノ科だった西崎さんがピアノに限界を感じていた頃に出逢ったのが「愛華」さんだった。 朝大学の練習室を取りに行くといつも前にいた美しい少女、それが彼女だった。 飾り気がないが美しかった彼女は毎日講義の合間にピアノに向かう真面目さで、浮ついた学生が多かった中で異彩を放っていたそうだ。 「真面目を通り越したクソ真面目ってやつだよ、きっとあの頃の普段のオレなら馬鹿にしてかもしれないだけど、愛華のピアノは圧倒的な透明感があって耳を引いたし何より……練習室の小窓から覗く彼女の横顔がまるで絵画の様に美しかったんだ」 夢見るように西崎さんが呟いた。 「その方が愛華さん……」 「うん、あ……菜々華ちゃんは愛華知ってる?ピアノ科の涼木愛華」 西崎さんや蔵岩さんも有名だったが、同じくピアノ科の憧れのお姉様的な存在だった愛華さんの事も知っていた。後輩としてはもちろん。 「はい、一度伴奏をしていただきました……女神のピアノでした」 「そう……じゃああのピアノの美しさに菜々華ちゃんも気づいてたんだね」 気づいていましたとも。それに女神が貴方の彼女だった事も、もちろん知っておりますとも……
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