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「植田さん大丈夫っすか? いつもよりペースが遅いですよ」
気持ちが沈んでいる僕に話しかけてきたのは、最近ここに配属されてきた松本だ。設備の拡張で人手不足になるから、新しい作業員を募集して来たのだが、これがなかなか仕事の覚えが早くて助かっている。
それにしても、松本に心配されるぐらい不調なのかと不安になる。自分では大したことないと思っているが、他所から見たらかなり酷いのだろうか。
「部品の組み立ては一通り覚えたんで、休憩室で休むと良いっすよ。何かあったら呼びますから」
「うーん……じゃあ、そうさせてもらおうかな」
松本の言葉に甘えて休憩室に向かう。彼はちょっと言葉遣いがなっていないが、作業中に話しかけられることはあまりないから大丈夫だろう。
休憩室の扉を開けると、五郎さんがコーヒーのカップを持って寛いでいた。こんな時間にいるのは珍しい。
「おや、植田じゃないか。お前も休憩か?」
「五郎さんがこの時間に休憩は珍しいですね」
「今日は色んな所に救援に行っていたからな。午後からも忙しくなりそうだから、早めの休憩をとってたんだ。今日は休んでいる人が多いから大変だよ」
「季節的に花粉症ですかね?」
「花粉の量は例年通りってアナウンサーの姉ちゃんが言っていたから、各自ちゃんと対策してるはずなんだがなぁ。困ったもんだ。まあ、部品に鼻水やら唾やらが飛んでも困るし、休んでくれた方がありがたい」
花粉症に縁がない僕に彼らの気持ちはわからないが、鼻水がぐじゅぐじゅ出てくるのは嫌だなぁと思う。想像すると鼻がむずむずしてきた。
「対策をしてもなる時はなるし、今日は仕方がないですね。こんな日もありますよ」
「だな。まあ植田の場合、他人の心配より自分の心配をした方が良い。まだ本調子じゃないんだろ?」
「ええまあ……あの、ちょっと話聞いてもらって良いですか? 話したら楽になるかもしれないので……」
「まだ時間あるし、悩みがあるなら聞くぞ」
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