SOUL OUT

10/15
前へ
/15ページ
次へ
「おい、クソガキ」 「なっ、なんだよ」 「おまえ、泣いてるのか?」 「泣いてないよ。花粉症だから鼻水が止まらないんだよ」 「魂も鼻水出るんだな」 「知らねえよ」  化け猫から顔を隠して鼻をすするクソガキ。 「なあ、クソガキ。もしかしたら体に戻れるんじゃないのか?」 「えっ、どういうこと?」 「だからさ、試しに自分の体に重なってみなよ。そしたら案外簡単に魂が体に戻るかもしれないよ」 「そんなにうまいこといくかな」 「やってみないとわからないじゃないか。今まで一度も試したことないだろ」  ったくめんどくさいなー。こんなんで元に戻れるわけないじゃねえかよ。  ぶつくさ文句を言いながらも、素直に自分の体に自分の魂を重ねるクソガキ。 「こうして改めて自分の体に重ねてみると、なんていうか、懐かしい気持ちがよみがえってくる。というわけでもないな。天井しか見えなくて殺風景だし」  窓から風がすうっと入ってきて、レースのカーテンを揺らした。 「ねえ、化け猫。おれ、何も変わってなくない?」  化け猫は、半眼を開けたまま微動だにしない。 「なんだよ、無視かよ」  春のちぎれ雲が太陽を覆ったとたんに、病室はとても暗くなった。     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加