SOUL OUT

8/15

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「ほら、クソガキ、病院行くぞ!」 「えー、本当に行くのー」 「駄々をこねるな」  化け猫はひょいと屋根から飛び降りた。  しょうがないなー。クソガキは観念したようだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「やっぱり来なければよかった」 「なんでだよ」 「だって、病院って陰気臭くない?」 「陽気な病院なんてあるわけないだろ」  北向きの窓からは春の陽光は直接入ってこないが、回り込んでくる光は病室の輪郭を淡くぼやかしていた。 「なんか、自分の死体を見るのって嫌なんだよね」 「まだ、死んでいるわけじゃないぞ」 「死んだも同然じゃん」  クソガキの体は横たわったまま、ピクリとも動かない。 「なあ、クソガキ」 「なんだよ、化け猫」 「私は化け猫だ。化け猫は術を使うことができる」 「へー、どんなことができるんだ?」 「人間の魂を見ることができる。そして、しゃべることができるようになる」 「うん、知ってる。大した能力じゃないな」 「あと、死人を生き返らせることができる」 「えっ?」 「だから死人を、つまりお前を生き返らせることができる」 「うそ?マジで!それじゃあ、生き返らせてくれよ」 「わかった。生き返らせよう」 「やったー!」クソガキは小躍りしている。 「ただし、私の命と引き換えにな」 「えっ?」 「だから、私の命と引き換えにおまえを生き返らせることができる」 「なんだよそれ。無茶苦茶じゃねえか」 「私は猫にしては十分長生きした。いつ死のうが別に構わんよ」 「馬鹿野郎!おまえの命をちょうだいして生き残ろうなんて、そこまで落ちぶれてはいねえぞ!」 「生き返りたくないのか?」 「生き返りたくない!」  クソガキはそっぽを向いて、黙り込んだ。  生き返りたくない、か。  きさまはそう言うと思ったよ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加