SOUL OUT

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SOUL OUT

 魂が抜けてしまった。  やる気を失くしてしまった人間のことを、「まるで魂が抜けてしまったかのような」と言ったりするが、この男の場合は、本当に魂が抜けてしまった。  病室で中途半端な高さに浮かんでいる男の魂は、ベットに横たわっている自分の体を見つめている。  目を閉じたままぴくりとも動かない。  体につながれた心電計は波形をモニタに映し出すと同時に「ピッ・・・ピッ・・・」と鳴り響く。  この無機質な電子音だけが、男の体にかろうじて命が残されていることを示していた。  高校受験に合格し、本日無事に中学校を卒業した。  短い春休みを挟んで、バラ色の青春が待っているはずだった。  その帰り道に、まさか交通事故に遭うとは。  男はまだ自分が半死の状況に置かれていることを把握できずに、冴えない表情をしていた。  まるで魂が抜けてしまったかのようだ。  まあ、もうこれ以上魂は抜けようがないんだけど。    男の体の周りを家族が取り囲んでいた。沈痛な面持ちだ。幼馴染の女の子は、男の母親に抱きついて泣きじゃくった。 「あーあ、女の子を泣かせやがって、悪い奴だな」 男はギョッとした顔でキョロキョロしだした。 「しかし、お前もバカだな。なんでこんなタイミングで車に轢かれるかね」 男はやっと声の主の存在に気付いたようだ。それでもまだ怪訝そうな顔で呟いた。 「なんでお前が、何を言ってるんだ?それともおれが聞こえているのは幻聴か?」 「忘れちまったのか?相変わらずのクソガキだな。10年来の付き合いだってのに、薄情なやつだな」  いくらクソガキだからって、まがいにも飼い主ではないか。  ご主人様が飼い猫のことを忘れるなんて、失礼極まりない。
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