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その日は特に暑い日だった。日中からの暑さで完全にバテてしまいコロッと寝れるだろうという予想に反し、夜に寝ることも叶わないような、地獄の釜の中にいるような暑さの日だった。
やはり、彼女は来た。僕はソレを予想して冷たい麦茶をコップに注いで待っていた。その日もいつもと同じように楽しく会話をした。夢の世界から追い出され暑さに苦しんでいたはずなのに、彼女と話していると心が踊り暑さも忘れていられた。僕は今すっかり夜型人間だが、彼女とのこの時間がその習慣を形成したのだろう。甘美な時間は長くは続かない。夏の夜が短いのは物理的にもそうだが、夜とはそもそも短いものなのだ。それに加えて楽しい時間というのはあっという間に過ぎる。
やがて東の空がぼんやりと明るくなり始めカラスが高らかに歌い出すと、彼女はやはり居心地悪そうにし始め、帰ると言った。今日僕は彼女を引き止めてみようと決心していた。
しかし、結局うまくはいかなかった。駄々をこね彼女を引き留めよう試みるが、彼女は聞く耳を持たなかった。僕は心のタガが外れ、強硬手段に出た。彼女の腕を掴み無理矢理に引き留めようとした。優しい彼女なら許してくれるだろう、といういかにも小学生らしい甘ったれた考えが今ではとても憎らしい。
結果彼女は僕より少し歳上の力を発揮して振りのけ、足早に去ってしまった。
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