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朝
朝、とは一般的に清々しい一日の始まり、という認識をされる。朝の日差しはその日の元気をくれ、希望を貰うこともある。しかし、朝は時に残酷である。
朝は別れの時間だ。
僕にはその認識が昔からずっとある。だから朝が好きになれない。もちろん夜型で朝起きるのが苦手だというのも理由の一つだが、もっとも大きな理由はやはり、別れの辛さだろう。
彼女は暗闇の中不思議な存在感を放っていた。
彼女と出会ったのは小学二年生の夏の夜。それは夏真っ盛りの寝苦しい夜のことだった。蚊帳の中で寝苦しい夜をなんとかやり過ごそうと、人の顔に見えるおぞましい天井の模様を恐れながら障子に映る月影に夢を託して自分の世界に浸っていると、彼女は現れた。
月の光を後光のように煌めかせいつの間にか縁側にいた彼女の異様な雰囲気に気が付いて僕は目が離せなくなっていた。その頃はまだ防犯意識なんてものはなくて縁側を開け放して寝ているような時代だった。
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