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飛鳥の問いかけには答えず、日和はマイペースでデタラメな発声練習を始めた。
「は、は、は、は~♪」
ド、ミ、ソ、ドの音階で声を整えたかと思うと、
「美人に~なりたいな~♪」
「絶世の~美女に~生まれ変わりたい~♪」
恐らく即興で歌っているのだろう。
聞き覚えのない曲を、情感たっぷりに歌い上げている。
「誰も聞いてないけど……恥ずかし!」
砂利石の上に尻を浮かせたまましゃがんだポーズの飛鳥は、顔を背けながら毒づいた。
けれど、日和の声量がすごいことは認める。
演芸好きな、田舎の女子高生。
本当に日和は、ただの演劇好きな素人なのだろうか。
「冷たくて気持ちいいよ~。飛鳥さんも入りなよ!」
自由に声を出していた日和が、改めてその背中を見つめ直したタイミングに気づいたかのように飛鳥の方を振り向き、誘った。
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