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心の声を聞き取って、すべてを見透かしたような目を日和は向ける。
逃れるように反射的に俯いた飛鳥は、ごまかすようにジャージズボンの裾を彼女と同じように、くるくると巻き上げた。
シューズを脱ぎ捨て、まずは足首まで川の水に浸かる。
「冷たっ!」
予想以上の大声が出たことに、飛鳥自身が驚いた。
「さすが飛鳥さん、いい声出すね~」
茶化したトーンではなく、本当に感心したように日和が言う。
「ここだと思った以上に大きな声が出せるでしょ」
やっぱり、日和は飛鳥の心情と行動のすべてを見透かしている。
腹をくくって、飛鳥は発声練習を試みる。
児童劇団に所属していた頃、散々暗唱させられた古典の和歌を、朗々と歌い上げた。
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