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「すごい! 飛鳥さん、やっぱり元プロだね!」
『元プロ』という響きは少し胸にズキンと来たけれど、決して嫌みでなく素直に日和が感心してくれていることは彼女の高揚した表情から伝わってきた。
中学生になり、子役として需要が無くなってきた頃。
歌手として再デビューする話が持ち上がり、本格的なボイスレッスンも受けた。
当時の売れっ子プロデューサーに曲を提供してもらい、レコーディングの日程まで決まったところで、この話は頓挫した。
オーディションで事務所が獲得した実力派シンガーのデビューが優先され、曲も投資金も、すべて持っていかれたのだ。
飛鳥が歌うはずだった曲で華々しくデビューした彼女は、今も第一線の歌姫で活躍している。
きっと、歌っていたのが自分だったなら。
泣かず飛ばすで終わってしまっただろうなと、負け惜しみではなく思っている。
事務所の選択は、正しかったのだと。
「芸能界って、そういうとこなんだよね……」
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