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「私と一緒に、演劇やりましょう」
島内高校1年2組の垣内日和が、1年1組の元成飛鳥の元へ出向き、堂々とスカウトしたことにクラス中がどよめいた。
「元成さんに声かけるなんて、勇気あるな」
「ていうか、誰?」
「隣のクラスの子でしょ」
「あんなやつ、いたっけ?」
「地味すぎて、知らね」
1組の生徒のヤジが、全てを物語っている。
垣内日和はクラスが変われば誰も名前を知らないくらい目立たない生徒の1人だったし、そんな地味な彼女が元成飛鳥に声をかけ、ましてや演劇に誘うなど、恐れ多い行為といえた。
なぜなら。
元成飛鳥は、その名を知らない者などいないと言い切れるくらいの、元国民的有名子役であったからだ。
飛鳥は読んでいた文庫本から目線を上げ、高校入学後、初めて自分に声をかけてくれたであろう同級生を見つめた。
「私に言ってるの?」
「元成さん以外、いないでしょう?」
日和は、細い目をさらに細めて笑う。
はっきりとした二重まぶたの大きな瞳の飛鳥と比較すると、顔の造作はさらに地味に見えた。
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