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過ぎたことに思いを馳せ、ぼんやりと遠くの山を見つめていると、顔面に水しぶきが飛んできた。
あまりの冷たさに「ぎゃっ!」と悲鳴を上げる。
2人きりなのだ、日和の仕業に他ならない。
「ちょっと、何すんのよ!」
睨み付けると、日和は楽しそうに再びデタラメな歌を歌い始めた。
「飛鳥さんは、美しい~♪」
「睨み付けても、美しい~♪」
「水が滴り落ちても、美しい~♪」
「水も滴る、いい女~♪」
「ちょっと、その変な歌、やめてよ!誰も聞いてないからって……」
飛鳥がそこまで怒鳴ったところで、1台の軽トラックが通りかかった。
手動式で窓を開け、おじいちゃんが顔を出す。
「あんたら、喧嘩は、やめいや!!」
よく通る声で一喝すると、そのまま走り去った。
「何気に、おじいちゃんが一番いい声してたよね」
日和の一言に、飛鳥も吹き出した。
足首の冷たさも、忘れてしまっていた。
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