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答える前に、緞帳が開かれた。
女子バスケ部の上級生3人が、仁王立ちで飛鳥と日和を代わる代わる無遠慮に見比べる。
「あなたたち、何してるの?」
3人の内のセンターが口を開く。
「演劇部の練習です」
間髪入れずに、今度は日和がよく通る声で答えた。
「え、うちの高校に演劇部ってあったんだ!」
左サイドが、オーバーにリアクションした。
さすが、日常的に声出しをしているだけあって、女子バスケ部の上級生たちも発声の基礎が出来ている。
大声合戦のように、静まり返った体育館に会話が響いた。
「あ、あたし、この子知ってる!」
右サイドが、飛鳥を指差しながら続ける。
「『ナントカ飛鳥』だよね、元芸能人の」
右サイドの言葉を受けて、左サイドが軽く吹き出しながら揶揄した。
「『ナントカ』って、元芸能人にひどくない?」
「え、だって、この子がテレビ出てたのって、大昔の子どもの頃だもんね?」
飛鳥の耳元が、みるみる赤く染まるのが後ろ姿からも分かった。
「飛鳥さん、気にしない!」
声のトーンは低めだが、しっかりと、諭すように日和が言う。
静かに背中をさすっていた飛鳥だったが、
「ごめん、ちょっと休憩してくる」
と言い残し、舞台を降りた。
ちょっと、傷つけちゃったんじゃない?と嘲笑するような上級生たちの声に紛れて、日和の渾身の叫びが走り去る飛鳥の背中に届いた。
「飛鳥さんは、唯我独尊だからね!!」
唯我独尊?
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