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「そうかもな…。けど、それじゃあ時間外に逃げられる可能性がある。引き分けじゃ意味が無いんだ。実戦では敵の息の根を確実に止まるまでは何が起こるかわからない。」
「…。」
「訓練であれ実戦を常に意識しなければ訓練の意味が無い。」
「じゃあどうするんだ?」
「相手にはケレンがいる。あいつはああ見えて、優秀な指揮官だ。今のメンツじゃまず勝てない事は誰もがわかっているだろう。だから逃げに徹するハズなんだ。恐らくムゴルを大将にしてガチガチに守ってくるだろう。だがケレンは相手の裏の裏をかく、横陣を三列にしき、ムゴルを前線に出してくる。が…その先がわからない。自分を大将に置いて、その先はどうする?どんな汚い手を使うだろうか?どう動く?ケレン。」
「考え過ぎじゃないのか?ケレンがどんな策を使おうと、力押しのセオリー通りに戦った方が、無難に勝てるんじゃないのかな?」
「いや、敵はケレンだ。確実にあと一つ何かを仕掛けてくる。自分達が逃げ切る方法をだ。その目論見を潰す。」
「いい策があるのか…?」
「ああ。俺の考える作戦は相手と自分達の戦力がこの模擬戦の組み合わせでのみ有効な諸刃の剣だ。」
「おやっさん。珍しいですね。この時間に見学に来るなんて?」
「まあな。ちょっとある事で残尿感があってな。」
特設グラウンドで両陣営が戦略を練っている頃 ガイストは物思いにふけっていた。
「全部本当なんだね?」
昨日のファリスとの口喧嘩を思い出しガイストは昨日からやり取りを何度も何度も一人回想していた。
「そうだ。俺はキョウト王国の王族の生き残り…。主家再興を目論んでいる。」
「やっぱりおやっさんは僕達を利用してるじゃないか。」
「違うッ!それはお前達を食っていかせる為に仕方なくなんだ!俺はこの糞食らえな世の中でお前達家族を守るすべが分からないんだ!お前達の衣食住を保証してやるためだけじゃ駄目なんだぞ!今の世では国家を作るぐらいしても全ての孤児を救う事、戦争を終わらす事なんかできっこないんだ! 誰かが礎にならなければ誰も何もしないんだ!俺は本当はもう戦争なんかこりごりなんだよ!」
「……。」
「教えてくれ…俺はどうする事が一番正しいんだ…。苦しいんだよ…。自分の為に生きろと皆に命令してるみたいで…。死んだ仲間達に恥ずかしい。」
「それで、誰にも言えなかったんだ…。」
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