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試合の合図が鳴り響いた。
地鳴りをあげて両陣営のムーン・ビーストは突撃した。
カムリ・栞のシルバーウルフに五機のコボルデが襲いかかった。
(かかった。)
自機を狙わせたのはフェイク。相手のムゴルは少し骨のある男だが、あちらの機体はコボルデ、こちらの機体はバージョンが一段上のウェアウルフェンな事にイニシアチブがある。そして相手の陣形ではムゴルを無力化してしまえば、後の敵は大した戦力でもない。
後続の部隊にケレンがいるが、MB戦闘は平均並みの強さである。不気味な男だが、一先ずムゴルを潰してしまえば、敵の、ケレンの思惑は大幅に狂う筈。後続の部隊も、己の力量から観れば並み程度の強さな為、ここでもまたイニシアチブを取る事ができる。
(いくぞ…!)
カムリのシルバーウルフは敵の攻撃をあれよあれよとかいくぐり、ムゴルのコボルデと対面した。その瞬足から見る目を疑ったムゴルだが、
「カムリ!ここであったが100年目!貴様だけはこの俺の手…。」
バキャ!っと後ろショルダー部分から鈍い音がした。
堪らず後方確認をするムゴル機。するとそこには、シノギリス・ハヤビキが駆るスカーレッドウルフが強靭な右爪で、ムゴルを捉えていた。
「シノギリス…。」
ムゴル機の行動が一瞬だが、止まった。
その一瞬をカムリは見逃さなかった。シオマネキの様な仕様になっている特設された右腕をチョッピングライトでムゴルの胴体にかました。
高い高度を月食力で作りあげたムゴルだが、余りの威力に一回転、二回転してダートの地面に突き刺さった。恐らく失神したムゴル。
カムリ、シノギリスでムゴル機を潰す目論見はまんまと成功した。あとは全軍で総力をあげて各個撃破に臨めば第一の作戦はクリアだ。
「!?」
少し安堵したカムリ機の正面モニターが徐々に紅く塗り潰されていった。冷静に対処しようと首を振ったが、なんと徐々に機体が斜めに倒れ始めたではないか…?
(何が起こった…?)
慣性に逆らえず、尻もちをついたシルバーウルフ。ドシャと倒された更にその上から何かの重量がのしかかってしまった。機体の状況を確認したい。
が次の瞬間、敵軍の一斉追撃?がカムリに向かって放たれた。一撃、二撃と敵のコボルデの爪の攻撃が上から下に放たれ蜂の巣になってしまう。的となったシルバーウルフはアンバランスな右腕と手の甲でコックピットを防御した。
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