カムリの初恋

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カムリの初恋

モザイクのかかった少年は人殺しが好きだった。怯える表情。震える身体。瞳から流す涙。全てが美しいと心の底から思えた。だから今夜も殺した。轢き殺し。叩き殺し。焼き殺した。 MBから降りた少年は「まだ、トドメをさせてない。」と呟き、サブマシンガンを手に取り乱射した。消えて無くなる命を冷笑すると、まだ足りない。今日は後百人は殺したい。嫌千人、万人、億人、兆人。この欲が満たされる事は未来永劫ない、永遠のロマン!永劫のサディズム! モザイクのかかった少年は嘘が嫌いだった。故に人を縊り殺す兵士は皆大嘘つきで大嫌いだった。オレは狩人を狩る。腐った世界をオレのやり方で是正する! MBに乗り直すと、逃げ出した馬鹿なMB兵を爆死させる。「あーっはっは!民間人を喰いものにして私服を肥やす馬鹿な戦争オタクはオレが天誅をくだす!」 少年の歪んだ正義は今でも貫かれ、強固な激情となっている。 死なないでいい兵士なんて一人もいない。 とても虚しい予知夢を見た。まだ年端もいかない少年が、無関係な民から金を搾取し、自由を撥ね付ける兵隊に、制裁を加える話。スクリーンに映し出された、モザイク少年は奪ってきた命を死んで償はせる。 殺しても殺しても、まだ足りない。「腐った世界の根幹は貴様ら兵隊のせいだ!ならオレは根絶やしにするまでだ。」少年は主張する。 その思想の虚しさに思わず涙を流した。兵隊が生きていけるのは食い扶持が民の年貢で賄われるからだ。その様を見て兵隊は民をいつしか見下す様になり、そしてカーストができる。争いをしては金をかけ、困窮し、敵対する。 何故こんな惨めな争いをしなければいけないのか? 太古の昔、人間は争いの愚かさを痛感し、完全に世界から戦争が消えた時代がある。その時代は犯罪こそあるものの、人々は皆善良で規律を順守し恋愛も自由で、何より平和を愛する人々の時代だったらしい。 それがいつしか、太陽が崩壊してから、地球に破片が落ちてしまった事から世界が再び戦火に包まれてしまってこんな時代になってしまった。 でもその様に伝わるのに今何故太陽があるのだろう。矛盾を孕んでいるが、 ともあれ何故皆大昔に戻ろうと思わないのか? モザイク少年の独善はファリス・京の心を消耗させた。あんなに小さい子供の何が殺人に駆り立てるのか?学会でもあの年齢の少年が人を殺す様を見る事はなかった。
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